『FADOの有る生活 A vida com Fado』  ポルトガル音楽ファドを愛する私のブログ Eu sou uma cantora japonesa cantar fado.      Fado修行の日々や地中海地方の文化についても綴っていきます

ポルトガルの #FADO(ファド)を歌う渡辺エマのブログです。FADOやポルトガルについて紹介します。ポルトガルには他にもワインや料理、世界遺産等魅力が一杯!サッカーのロナウドの故郷でも有ります。

15) Alfama アルファマの夜の出来事 幻のFADOデビュー?

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15)リスボンのアルファマ地区にはFADOの店が集中している事は以前書きましたが、そのアルファマに数有るCASA DE FADO の中でも、テージョ川のほとりに近い南の端に、とても美しいお店が有ります。
マルケスダセ「Restaurante Marquês da Sé」です。
お店の内部には、アーチの連なる天井を石を張り合わせたモザイクのようなもので覆った古代の遺跡のような独特の内装が施され、各テーブルに置かれた、高さが1ネートルは有ろうかという時代がかった燭台のろうそくの明かりに照らされると、とてもロマンチックです。
蓮見氏リスボン到着の二日目、私達はそこへ食事に行きました。

お店の開店時刻の8時に到着すると、私達は1番乗りでした。
アルファマ地区のファドハウスは普通8時頃から食事が始まり、9時頃からFADOが始まるのが一般的なようです。
お店のマネージャーのマチルデさんに我々が日本から来た事を話すとても歓迎してくれました。
格が有って敷居の高そうなお店なのに温かい皆さんの対応に、私達もすっかりリラックスして、美しい店内を見渡して、この空間で演奏したらどんなだろうかと話し合いました。
そして普段練習に追われ自炊ばかりでろくにレストランにも行っていなかった反動か、調子に乗ってあれこれ沢山の料理とワインを注文しました。
前菜には、海老をトマトと味噌で煮て香草を散らした一品と、生ハムにモロッコインゲンの天ぷらのようなものが添えられている一品を頼みました。
白ワインがどんどん進みますね!

メイン料理に注文したのは、私はリスボンの名物、干し鱈「バカリャウ」のお料理。
トマトやパプリカ、オニオン等とグリルした厚切りのバカリャウに、大量の揚げたジャガイモが添えられています。
リスボンではバカリャウは煮たり蒸したり揚げたり、色々な調理方法で食べられています。
蓮見さんは肉の気分だという事で、牛と豚のお肉のグリル。
こちらにも沢山のジャガイモが添えられています。
そんなお料理を食べてワインも白、赤を一本づつ空けてしまった頃にはお店にも他のお客さんが何組か来ていて、いよいよFADOが始まる気配です。

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店内の照明が落ち、3人のミュージシャンが店の中央の丸いアーチの天井の真下に入って来ました。
男性のファディスタ(FADO歌手)と、ビオラ奏者、ポルトガルギター奏者です。
ちょっとレオナルドディカプリオに似ているファディスタ。
ビオラを弾いているのは、フランス人俳優ジャンレノにそっくりなおしゃれな男性。
そしてポルトガルギターを弾くのはとても若い、まだ少年という感じの男の子。
情感たっぷりの優しい歌声。
美しく切ないギターの音の絡み合い。
三人の奏でる哀愁たっぷりのFADOがアーチの天井に響き、店の隅々にまで広がります。
ああ〜〜〜FADOの本場に居るんだ!
泣きそうなくらい心が震える一コマでした。

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ディカプリオさんの次は女性の歌手が入ってきました、彼女もとてもきれいで繊細な声で4曲程聴かせてくれました。
私もあのくらい細部まで美しい声がだせるようになるにはどうしたらいいのかなあ等と考えさせられました。

さて、女性の歌が終わって、次は何かな〜と待っていると、お店の人がこちらにやって来て、貴方も歌いなさいと言うではありませんか。
お腹いっぱい山盛りのジャガイモも食べちゃったし、もうワインを2本も空けている酔っぱらいなので、本当は歌なんて歌える状況ではないんですが、ここで断るのも格好悪いとも思い、「1曲だけ」ということで私も歌う事になりました。

「どうしよう!どうしよう!どうしよう!何を歌えば一番失敗しないかな。歌詞を絶対にド忘れしないのってどの曲だろう!酔っぱらってるし〜」
と、みっともなく動揺する私に、同じくワインですっかりご機嫌の蓮見氏はいたって気楽に「大丈夫だよ〜〜失敗したってなんだっていい思い出にはなるんだからさ〜♪」
他人事だと思ってこんな返事です。

よ〜〜〜〜し。
まな板の上の鯉ならぬ、鱈(バカリャウ)の気分でやるしかないんだ!
私はFADOを歌う為にここリスボンまで来たんだ。
ということで、ステージが終わって一旦引っ込んでいるミュージシャンのところへ、こちらから挨拶と打ち合わせをしに行きました。
「曲はBARCO NEGRO」「キーはAm」でお願いしたいのですがということを伝えるとその場でリハーサルが始まりました。
さっきのディカプリオ君が傍で一緒に歌って励ましてくれます。
突然のセッションですので、いまいち音が合わない部分も有ったのですが、もうやるしかありません。
リハーサルが終わると、席に戻る間もなくそのまますぐに本番となりました。
気がつくと蓮見氏もギターを貸してもらったのか、私の目の前でギターを抱えています。
先程までディカプリオ君が歌っていたアーチの下に我々4人が向かい合って輪になる様にして演奏が始まりました。

喉がカラカラだな、水を飲んでおけば良かったと思った事とか、
私の正面で椅子にカッコ良く片足を乗せて立ってギターを弾く蓮見氏。
私の左右にはポルトガル人ギタリスト。
テーブルでゆらめく蝋燭の炎。
覚えているのはそんな事ぐらいのあっという間の出来事でした。

全て蜃気楼の様に感じられます、、、。

リハーサルからそのまま本番に連れて行かれてしまったので、大変残念な事に、その演奏を録音する事が出来ませんでしたので、蓮見氏と私の幻のFADOデビューとなりました。
いやいや、本当に夢だったのかもしれません。
でも、あの蜃気楼のような光景は、たとえ夢だったとしても一生忘れられないでしょう。
あの場で私達の演奏を聴いて下さった見ず知らずのお客さん達を始め、ミュージシャン、お店の人、蓮見氏、ポルトガル語の先生、グィダ先生、家族、その他色々な人に感謝の気持ちで一杯です。
旅の後半も頑張ります。

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LISBONに行ったら是非、私の蜃気楼の舞台となったこのお店に行ってみてください。

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